VoChiMinh’s blog

決して煌びやかではないホーチミン駐在妻の日々のつぶやき

ダンカンさん

テト休暇を終え2月3日にホーチミン に戻ってきた。

最近流行りの感染病を避けるため、空港のなかでも特に人の多い搭乗口を避けると、そこだけポコっと人がいないエリアを見つけたのでベンチに座る。

すると周りにいた10人くらいが全員中国語を話していることに気づく。

なるほど。差別や偏見は良くないぞ。

でもどことなくソワソワする自分がいたのは事実である。

 

ホーチミンに戻ると、学校も対策をとっていた。

ベトナム人の学生たちは2週間開校が延期され、

私たち外国人は1週間だけ延期された。

マスクを外すなというお達しとともに今週から授業が始まった。

もしかしたら授業をしている先生達も、外国人である我々をそういう目で見て物凄く警戒しているのかもしれないな、と思う。

 

実際、台湾人のイェンは飛行機が飛ばすホーチミンに戻って来ていない。

香港人のイップはかろうじて戻ってきたが、来週ビザを取り直すために帰国をするので次はいつ帰ってこれるかわからないと言う。

韓国の東大生グンスに至っては、来週末に本帰国をする予定だったが、

感染の拡大を両親が心配したためテト帰省からは戻らず今生のお別れとなってしまった。

 

こうして楽しかった時間も終息を迎えようとしているのが寂しいこの頃である。

 

この1ヶ月間のクラスメイトである4人はというと、

英語ペラペラだったジョンウックくん(22歳)はテト明けからもう既に来なくなっている。

フェイドアウトだ。

たぶんつまらなかったのだろう、若い青年の意欲とはそんなものだと、初月の経験からわかっている。

そして普段から仲の良い韓国人ヨンホとソンホは15日に本帰国するため居なくなる。

授業は21日まで続くのに。最終日は試験があるのに。

 

と、言うことはだ。

来週は私と、向上心に欠けたカナダ人のダンカンさんの2人きりになる。

一言で言うなら地獄である。

先生的にも辛いだろうし、練習相手になる私も精神的に削られることが大いに予想される。

彼は「ングイ」という発音が「ニョイ」になり、

「アンアイ」という発音が「アンニュイ」になる。

1週間習い続けている同じ単語も、金曜日になっても覚えられない。

ロールプレイングの授業においては、彼とペアを組まされた生徒は全員時間内に終わらなくなる。

もはや理解の範囲を超えて、かなり興味深い存在だ。

 

テト休暇の前、ダンカンさんと話していると彼はこう言った。

「このテト休暇はどこにも行かずにホーチミンに残るつもりだよ。テト中は街が静かで好きなんだ。

そしてなにより、この2週間で今までの復習を頑張らなくちゃね!みんなより出来が悪いからさ、ハハ」

その時私は大きく頷いた。

(そうね、あなたは4年もここに住んでいるのに、このレベルではまずいわね。

特に発音修正とボキャブラリー暗記には時間を割いて欲しいわね。)

そんな思いを込めて。

 

これは仕事においても言えることであろうが、

デキる人とデキない人にはさほど大きな差は感じない。

デキない人に対して特に腹を立てることもない。

しかし、頑張る人と頑張らない人には大きな差がある。

頑張らない人には多くの人が腹を立てるものだ。

 

そして彼はその一人であろう。

テト明け、実に3週間ぶりの授業で、私は彼に大きな変化を期待した。

しかし彼はマスクの下で確かにこう発音したのだ。

 

「ニョイ」

 

そんなベトナム語はない。

先生も彼が何を喋ってるのか分からず苦笑いをしている。

私もマスクの下でニヤリと笑うと、隣で日本語が得意なヨンホが私にこう言った。

「俺も最初は(韓国人東大生の)グンスから、こんな風に足を引っ張ってると思われていたのかなぁ、フフ」

私以外の人は誰も日本語がわからないことをいいことに、彼は堂々と悪口を言った。

「こら!」

と喝を入れ、クククと苦笑いをした。

 

来週彼が来ても地獄、

来なかったら来なかったで先生とマンツーマンなので気まずくて地獄。

長い1週間になることだろう。